動物ブログ

我々の身近な親友、犬、猫について(3)

犬と猫との違い(1)

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前書き

前回のブログでは「犬」「猫」と人間との関りの歴史を記述してその共通点を書き出してきた訳ですが、今回はこの両者の違いを出来るだけ詳しく述べてみたいと考えています。「犬」と「猫」とはともに食肉目に属する動物でありその体形から歩き方まで実に良く似ていますが「肉食獣の進化の過程」という観点から見ると全く違う動物であり、これほど進化の過程の違う動物も珍しいくらいに違うのが現実です。

「猫」はネコ科として究極まで肉食獣が進化した動物であり「犬」はイヌ科として究極まで進化した動物ですがDNAという遺伝子的な観点からも全く違います。両者の体形が良く似ているのは結果として最適な肉食獣として進化した両者が肉食獣の理想の形として良く似たものになってしまっただけであり、似ているのは体形だけでその他はすべて違うと言っても過言では無いくらいに違います。純粋に肉食獣として進化の過程を上り詰めてきたのは間違いなくネコ科でありあくまでも独自で特殊な進化をしてきたのはイヌ科のほうです。両者の知能の比較が困難なのはそこであり人間が良く用いる知能指数(IQ)という知能の測り方であれば優れているのは確実にイヌ科の動物のほうです。しかしこの「IQで比べる」というのは人間が考えた方法であり人間に近い知能を持つ動物ほどIQは高くなります。つまり人間から離れて進化した動物ほどいくら知能が発達していてもIQは低くなってしまう訳でありこれは「犬」と「猫」という人間以外の動物同士を比較する上では不適格な訳です。ネコ科の動物は単独で獲物を取る肉食獣でありイヌ科の動物は集団で獲物を取る傾向が強いですがイヌ科の動物でも単独で獲物を取る動物もおります。代表的なのはキツネやコヨーテがそうですが彼らの知能は極めて高くしかも集団で獲物を取る他のイヌ科の動物よりもネコ科の動物よりに知能が発達している点が単に「IQで知能を測る」事が間違いである事を証明しています。

とはいえ動物の知能や身体能力を主っているのは間違いなくその動物の「脳」であり「脳の機能」がその動物の能力を決めている事は確実です。そこで今回はまず「脳」の機能について出来るだけ詳しく述べてみたいと思います。宜しくお願い致します。

動物の脳の機能

良く誤解されているのが「脳の重さが重いほど知能が高い」という言葉や「大脳のシワが多いほど知能が高い」と思われている点です。現実には脳の重さもシワの多さも直接その動物の知能とはあまり関係がありません。

例えばゾウの脳の重さは人間よりも重く人間よりも大きいですし、イルカやクジラの脳ははるかに人間よりも複雑でシワも多いのが現実です。それでは彼らは人間よりも頭が良いのでしょうか?  まずは脳の重さの謎から考えてみます。

これは決して一概には言えませんが平均して脳の重さとその動物の知能とはその動物の平均の体重の重さと脳の重さの比率で決まります。体重が軽ければ脳の重さが軽くても知能は高いと考えられており現実にこの比率が一番高い動物は確実に人間です。では2番目なのはどの動物だと皆様はお考えでしょうか?  意外なことにその動物とはチンパンジーでもイルカでも無くもっと皆様の近くにいる動物です。その動物とはカラスでありカラスの体重に対しての脳の比率は人間に次ぎます。私が最初に「一概には言えない」と書いたのはそこでありこれも一概には比較できないものです。しかし現実にはカラスがたいへん賢い鳥である事は確実です。決してこの方式での知能の測り方は間違いとは言えないと思います。

次に脳のシワについてですがこれも直接は知能とはあまり関係がありません。しかし間接的には大きく関係してきます。

動物の脳はその中心部から徐々に周辺部へと発達してきました。つまり脳の機能は中心部にいくほどその生命を生かす為の原始的な役割になります。周辺部である大脳皮質の面積が多いほど知能が発達している事になりシワは全く関係がありません。どんどん周辺部を大きくしていけばより知能が発達する訳です。ところがすべての動物はこの「周辺部である大脳皮質の面積を拡大していく」進化の時点で大きな障害にぶつかります。脳は動物の機能を保つ上で大変重要な要素を持っている為に簡単に外部から衝撃を受けにくい様に例外なく頭蓋骨という固い容器に覆われています。頭蓋骨の面積以上には決して脳は大きくなれないのが現実です。その障害を克服する為に高等動物の脳は頭蓋骨に達する前にシワを作ってそのシワによって頭蓋骨の中でも表面積を増やしていきます。シワが多いほどその動物の表面積にあたる大脳皮質の割合は大きくなる訳であり人間の脳があんな複雑な構造をしているのは決められた「頭蓋骨の中」という空間の中で出来るだけ大脳皮質を拡大しようとして進化した結果です。ですから「脳のシワ」は結果として大脳皮質の面積と間接的に大きくかかわってきます。頭蓋骨の大きさが一定である以上シワを増やして表面積を増やすしか方法は無くだからこそ頭脳の発達した動物ほど脳の構造は複雑化している訳です。

次に「大脳」と「小脳」の関係ですが思考能力を主る「大脳」に対して運動機能を決定する「小脳」という関係はありますがこれも一概には言えないのが現状で「大脳」にも運動能力を決定する部分も多々あり「小脳」にも思考能力を考える部分も勿論あります。これはもともとの原始的な動物の脳が一つしか無かったものが進化の過程でその役割ごとに分化したものであり両方の脳にも原始的な動物であった頃の機能が残っているのが当然であり、他の臓器である「心臓」と「肝臓」との違いの様にはっきりとその役割を決めている臓器とは根本的に違います。その動物の「脳」とは「大脳」「小脳」から「延髄」までも含めて「脳」でありその動物の知能はすべてを合わせた脳の力になります。

「右脳」と「左脳」の能力の違いについてはもっとおおざっぱであり直感力、音楽力、図形力、全体を見渡す力、空間認知力を決定する右脳、言語力、論理的に考える力、計算力、物事の分析力を決定する左脳というのはどちらかと言えばそうだという事に過ぎず右利きの人と左利きの人とではこの機能が全く逆になっている場合も多々あります。「脳」に関する科学とはまだ良く解っていない部分のほうがはるかに多く、人間が眠りにつくシステムやその理由、夢を見る理由についても現在では全く未開拓な分野です。人間自身が自分たちのシステムすら解らない状態で人間以外の、それも人間とは全く違う進化の過程を経た動物同士の知能の比較は非常に困難です。これが犬と猫との知能の比較が出来ない最大の理由です。

「犬」と「猫」との脳の機能の違い

とはいえ「何も解らない」で終わるのでは意味がありません。今回のブログの最後にはこの両者の脳の役割の決定的な違いを記述してみたいと思います。

猫が犬より優れている点は間違いなく直観力であり、それを主る運動機能の高さです。この能力においてはネコ科の動物はすべての肉食獣をはるかに上回ります。出し入れの自由な鞘の付いた爪はネコ科だけに与えられた特殊能力であり敏捷な体がそうした機能を最大限に生かします。「直観的に鋭く働く能力」、この力を最大限に活かせるためにネコ科の動物は究極に進化した肉食獣であると言えると思います。

これに対してイヌ科の動物が優れている部分は物事を瞬時に間接的に考えられる能力です。「犬は賢い」と人に言われるのはそこであり猫とは全く逆方向に進化しています。

少し怖い話になりますが皆様がトラやライオンを鎖でつないで歩いている状態を想像してみてください。その状態でつながれているトラやライオンが鎖でつながれている状態からの自由を求めた場合に彼らは例外なく自分がつながれている鎖を攻撃します。ところがこれがイヌ科の動物であれば最初に攻撃するのは鎖を持っている人間です。瞬時に間接的に自分が自由になる為には何が最適なのか判断して鎖を持っている人間を攻撃する訳です。この犬の間接的に考えられる力をうまく利用したものが警察犬であったり盲導犬であったり救助犬であったりする訳です。彼らはいつも背後にいる人間の状態を間接的に考えて行動するから役に立つ訳であり自分が間接的に人間を助ける役目である事を最初から理解しているので使用する人間と使用される犬との利害関係が完全に一致する訳です。

直観力と身体能力に優れその為に進化した猫、間接的に自分の置かれた状況を判断しその能力を最大限に活かす為に進化した犬、「犬」と「猫」との決定的な違いはそこにありどちらかがどちらかの進化の過程を後追いしたものでは無く完全に別の進化の過程を歩んできて今日の姿があります。一見すると似ているこの両者は実は全く違う動物である事は間違いの無い真実です。

あとがき

もしこの両者が少しでも同じ進化の道を歩んできた歴史があるのなら人間は1つの動物だけと付き合ってきたと思います。全く違うからこそ両者が必要な訳です。

ところが面白いのはこの両者を一緒に飼うと犬が猫化するか猫が犬化する点です。どういう要因でそうなるのかは不明ですが私は両方経験しています。最初は犬が猫の様になりました。木登りを覚え屋根の上で昼寝し完全に猫と同化してしまいました。その次には猫が犬の様にになってしまい犬小屋で犬と一緒に昼寝し、犬の散歩の時にもいつも付いてきたのを覚えています。公園でも他の犬と一緒に遊び犬と同じ食事を最後までしていました。別々に飼っていると仲の悪い両者ですが一緒に飼うと仲良く暮らします。決して同時に飼った訳ではありませんがそれでも問題なく仲良くなります。この現象は現在でも不思議でありその理由は全く解りません。

さて次回のブログですが今回の続きになります。犬と猫との違いをその身体能力の違いから具体的に記述していくつもりです。今回はおおざっぱに身体能力の優れる猫と間接的な思考力に優れる犬と記述しましたが猫のすべての身体能力が犬を上回る訳でも無く犬の間接的な思考能力のすべてが猫を上回る訳でも決してありません。おおざっぱに見ればそうであるという事であり次回はこの両者の能力を出来るだけ細かく一つ一つ見ていきたいと思います。宜しくお願い致します。