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動物ブログ

我々の身近な親友、犬、猫について(7)
日本の犬(3)海外で飼われる日本犬

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前書き

前回のブログの最後で今回のブログは「日本の猫」を取り扱う予定である事を記述しましたがどうしてもこの2度のブログでは「日本犬」について不足している部分があり、急遽予定を変更してもう一度「日本犬で海外で飼われる犬」を書かせていただきます。

この「海外で飼われる日本犬」というのは2種類だけです。この二種類以外の日本犬は海外では「純粋犬」としての血統書が発行されておらず世界で「純粋の日本犬」として認められているのは秋田犬と柴犬だけです。今回はその背景やその犬の海外での歴史、何故他の日本犬が認められずこの2種類だけなのかも含めて書いてみたいと考えています。実は日本人にとっても歴史的にもこの2種類は特別な存在である事も含めて記述していく予定です。宜しくお願い致します。

アメリカ アキタの存在 

もし皆様が充分な犬を買う為の資金をお持ちであり優秀な秋田犬が欲しいとお考えになった時にどこに秋田犬の子供を買いに行くのが一番優秀な秋田犬を手に入れられる確率が高いとお考えでしょうか?  意外な事にその場所は秋田犬の原産地である秋田県の大館地方では無くアメリカのビバリーヒルズ周辺になってしまうという現実があります。

アメリカでの秋田犬の飼育の歴史はそんなに古くなく第二次大戦後から本格的に始まりました。日本に駐留した米軍兵士やその関係者がアメリカに持ち帰ったものと考えられます。戦後日本に入った進駐軍はかなり乱暴であり彼らの軍用犬として一緒に日本に入ったジャーマンシェパードと日本の犬を遊びで何度も喧嘩させて楽しみました。ジャーマンシェパードは身体能力の優れた使役犬であり犬としてもかなり大型である為に彼らは喧嘩させる日本の犬も大型のものを選んだ訳です。自然にその相手は秋田犬(とは言っても当時の純粋の秋田犬は極めて貴重で高価であった為多くは秋田犬の雑種)になった訳ですが何度自分の愛犬であるジャーマンシェパードと闘わせても絶対と言っていいほどジャーマンシェパードが勝てず逆に簡単に殺されてしまう事態が頻発しました。ジャーマンシェパードが生粋の使役犬であるのに対して雑種でも秋田犬の血を強く持つ犬は闘犬の血を受け継いでいます。秋田犬は純朴でおとなしい犬ですが本気で喧嘩すると本来の闘犬として扱われてきた本能が表れて恐ろしい強さを見せます。この普段は純朴で物静かでありながら堂々とした佇まいがあり怒ると非常に強い秋田犬にアメリカ人は強烈に興味を引かれました。そして彼らは祖国にこの犬を連れて帰った訳です。祖国であるアメリカでもこの日本犬の凄さはたちまち評判になり、多くのアメリカの金持ちが積極的に日本から優秀な秋田犬を輸入しアメリカで飼育、繁殖をし始めました。日本で純粋の秋田犬を増やしていく以上のスピードでアメリカでの秋田犬の飼育が始まった訳です。この為にアメリカ国内でアメリカアキタケンネルクラブが設立されアメリカ国内で血統書を発行し秋田犬は極めて高価なアメリカの金持ちのシンボル的な存在になりました。世界で「チン」の後に認められた日本原産の純血犬が秋田犬であったのはそういう事情からです。

現実に日本で秋田犬を飼育するのはかなり大変です。日本犬の中では唯一の大型犬であり飼うスペースも毎日の運動もかなりの苦労が要求される品種の犬です。ところが西洋の大型犬が初めから多いアメリカではそれほどの負担にはアメリカ人は感じない現実があります。結果として現在では日本で登録される年間の秋田犬の頭数よりもアメリカで登録される秋田犬の頭数のほうが確実に多く、高級犬として扱われている為にその質も高く日本にいる秋田犬よりもアメリカにいる秋田犬のほうが優れている部分も多くなっているのが現状です。アメリカの高級住宅地には当たり前の様に秋田犬がいます。

特定危険品種の指定

しかし犬に対して最も権威のある血統書発行団体がイギリスのケネルクラブである事には変わりは無くイギリスで秋田犬の純血が認められた時にはその犬の系統についてまたその犬の性格について議論されて人間にとって危険な品種である犬には「特定危険品種の指定」が付くようになりました。20数種類の犬がこの対象になり日本犬の中でこの指定を受けている犬種は秋田犬と紀州犬です。土佐闘犬などはこの規格も飛び越えておりイギリスへの輸入禁止犬種になっています。

自分の国ではブルドックなどの独自の闘犬を作っておきながらずいぶん勝手な理屈ですがこの態度こそが白人であり、イギリス国内で血統書が発行されていない紀州犬にまでこの「特定危険品種」の指定は無茶だと思うのですが、これには紀州犬の血統にその原因があります。紀州犬はイノシシ用の猟犬として極めて優秀ですがその優秀さは外国の猟犬とは全く違った一面を持っています。その歴史は明治時代の一頭の紀州犬から始まりました。

鼻食いロシアの登場

明治末期の日露戦争が終わった頃の日本でそれまでの紀州犬の狩猟の歴史を塗り替える不世出の名犬の登場がありました。この犬の名は「ロシア号」と呼び、現在の紀州犬の血統書にはこの「ロシア号」の血が間違いなく受け継がれています。

「ロシア号」はイノシシ狩りの狩猟の名犬でしたがその戦い方はそれまでのイノシシ猟の猟犬とは全く違うものでした。イノシシに噛みつきながらイノシシの攻撃を避け鉄砲を持った猟師が到着するのを待つのですが猟師が到着して鉄砲を構えるといきなりイノシシの鼻に全体重を乗せて噛みついて猟師が鉄砲を撃つ時にイノシシの動きを完全に止めてしまうという荒業を用いていました。野生動物の動画をご覧になれる時間のあるかたはライオンでもトラでも構いませんから彼らがイノシシを捕獲する時の映像を見る事をお勧めします。決してライオンもトラもイノシシの正面から鼻に噛みつくような事はしていない事がお解り頂けると思います。それほどイノシシの牙は鋭く一発の攻撃でライオンやトラに致命傷を与える事が可能でありそれゆえに彼らがイノシシを獲る時には背後から襲い掛かる訳です。ところがこの「ロシア号」はその正面からイノシシに噛みつき小型のイノシシであれば猟師の到着を待たずそのまま食い殺してしまうという荒業を日常的に使いました。一冬で「ロシア号」は数十匹のイノシシを獲り、獲ったイノシシの鼻がすべて無くなっていた事が記録に残っています。この「ロシア号」のうわさはたちまち広がりしかもこの特性は遺伝する事が解った為に多くの紀州犬と交配させられ「ロシア号」の血統は「鼻食い系」と言われて全国に広がりました。現在の紀州犬の血統も間違いなくその延長線上にある為に紀州犬だけ中型の日本犬の中で特別視されている訳です。闘犬から来た秋田犬と紀州犬はこのイギリスの決めた「特定危険品種」に入っています。

柴犬の流行

こうした荒々しい日本犬の特徴とは別に世界から認められ秋田犬に続いて世界で純血種になったのが柴犬です。柴犬は日本人の中でも「日本犬で最も完成された犬」と言っても良く他の日本犬とは別格的な存在です。他の日本犬が「秋田犬」「北海道犬」「紀州犬」とすべて地方名で呼ぶのに柴犬には地方などありません。太古の頃から日本中で愛され可愛がられてきたこの犬に地方名が付かない訳です。また他の日本犬が白色のものがあるのに対して白い柴犬は殆どおらず黒毛か胡麻毛か赤毛(茶色)で統一されています。しかし柴犬の狩猟性能は素晴らしくウサギやキツネ猟だけでは無くあの小さな体でイノシシからヒグマ猟にまで使える極めて勇敢で敏捷な犬種であり他の日本犬以上の才能を持っていたりします。しかもこの柴犬の最大の特徴は主人に忠実であり非常に明るい性格をしており日本犬の中では飛びぬけて小柄であり誰でもどこでも飼えるという日本人が飼う日本犬としてこれ以上無い素晴らしい犬種です。

この柴犬も最初に海外に渡ったのはアメリカです。最初はその名前は「ミニチュア アキタ」と呼ばれていましたが秋田犬とは何の関係も無い事が解ると正式に「シバ」と改名され世界中に広まり始めました。秋田犬が高級犬であり金持ちのシンボルであるのに対して柴犬は庶民的な犬であり、まずはアメリカで大流行して徐々に世界に広がってきています。殆ど体臭の無い美しい体、小型犬でありながら鋭敏な感覚を持ち無駄吠えをしない性格、明るくて愛くるしい表情はどこの国であっても好かれる特徴であり寒さにも暑さにも強く主人に大変忠実である事も人気に拍車をかけています。

しかし柴犬にも飼育犬としての弱点はあります。この犬は雄、雌二頭で飼うと完全な夫婦の状態になり基本的に他の柴犬とは交配せずに一生を送る事を選びます。つまり繁殖にはあまり向いていない犬であり、犬の原始的な状態が基本的に一夫一婦制であった事を証明している極めて原始的な特徴を持っている犬であるという事です。

日本人はこの柴犬の特徴を美点と捉えてこれまで大切に保存してきました。これから柴犬を飼う事を考えていらっしゃる海外の皆様、この事だけは胸に留めておいてください。柴犬は10キロにも満たない小さな日本の犬ですがその性格や特性はもっと大きな日本犬以上に日本の犬としての特徴を強く持っています。可愛がってやってください。その期待を決して裏切らない素晴らしい犬である事は間違いはありません。

あとがき

「日本の犬」が海外に出ていき喜ばれているのは非常に日本人としても嬉しい事ですがその歴史も性格も特徴も西洋犬と日本犬は全く違います。その事をきちんと理解して飼って頂けるのか考えると不安になる事も多いです。

秋田犬に関してはアメリカ人は解ってくれているであろう事はアメリカアキタの血統書を持つチャンピオン犬が日本人が日本犬の批准から見ても相当高い事で証明されています。日本犬と他の国の犬との一番の違いはその性格であり、他の犬の品評会が犬の形を見るのに対して日本犬の品評会で一番重要視されるのはその性格であり形が完璧でも性格が悪い日本犬に何の値打ちも無く何の賞も取れない事を海外の日本犬愛好者の皆様には解ってほしい事実です。日本犬の歴史を否定し性格を無視するのであれば私は日本人として決してその国民を許しません。そういう人は最初から日本犬以外の犬を飼ってください。日本犬は日本人の魂のこもった大切な犬です。宜しくお願い致します。