超常現象を考える

大槻義彦教授に異議あり(後編)

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前書き

さて、皆様とのお約束通りこの(後編)では大槻教授の「物理学による心霊現象や死後の世界の否定」を大槻教授がご専門の物理学で批判していくつもりですが、その前に前回の(前編)を書いた後に「物理学は苦手だ」とのコメントをいくつかいただきました。

それは正常な人間である事の証明です。「物理が得意だ」という人間のほうが確実におかしな人間であって私自身も物理学など苦手で大嫌いです。皆様の学生時代に「物理が得意だ」と周りに言っていた人がいるのならその人の事を思い出していただきたいです。そういう人は確実に変わり者であった筈です。前編でも触れましたがそもそも物理学は定義があいまいで「科学」と呼ばれる項目の中ではまだまだ発展途上の未開発な分野です。ですから普通の人は物理学が苦手で当たり前であり、その事は大槻教授ご自身も勿論ご存知の筈です。ご存知でありながらテレビ番組や著書では物理学で超常現象を否定しておられる、この事実が私が大槻教授が確信犯であり一般庶民を馬鹿にしていると考えている根拠です。

この私の根拠に対して大槻教授が「そんな事は無い」とおっしゃるのであればテレビや一般の著書を書いているよりも物理学会に「物理学による霊の否定」の論文を提出し、学会で発表してください。お立場上そんな事は簡単に出来る筈です。その論文が世界の科学者に認められればノーベル物理学賞は確実に取れます。

かつて相対性理論を発表し速度の変化によって時間も変化する事やこの空間が重力の影響を受けてひずみが生じる事を公表したアルベルト アインシュタインですら彼の遺言は「次に生まれ変わったら配管工になって平凡な人生を過ごしたい」であり、ノーベル物理学賞を受賞したアインシュタインは死後の世界や人間の転生については認めていました。その偉大な功績を塗り替えられるものが発表されれば確実にノーベル賞を取れご自身がおっしゃっている様に今後のオカルト番組や霊能力者の登場を確実に防ぐ事にもなり科学の進歩も阻害されない時代を築く事が出来る筈です。

何故そういう作業に全く手を付けずに素人相手にだけに物理学で超常現象の否定をされているのでしょうか? 答えは大槻教授の考える物理学が他の著名な物理学者から見て通用しないものでありだからこそ大槻教授は殆ど物理学を知らない素人の前だけでご自身の考えを述べられているとしか考えられません。

この(後編)ではそうした大槻教授の述べられている物理学の盲点を暴いていきます。一般の皆様に解りにくい物理用語も書きますので少々退屈に感じられるかもしれませんが何卒最後までお読みください。物理の法則など自然界にある事を論理的に書いたものにしか過ぎず最後までお読みいただければ必ずご理解いただけると私は信じています。それでも解らなければ個別に質問していただければ回答させていただきます。宜しくお願い致します。

エントロピー増大の法則は霊の存在を否定できるのか?

大槻教授は著書の中で「物理、化学の公式は歴史が変わっても絶対に変わらない不変の法則だ」と述べておられます。私も全く同意見で発見された理数系の法則は歴史が流れても絶対に変わらないと考えています。1+1=2であるのは1万年前でも10万年後でも変わらない事実でありこの回答が3になったり1になったりする事はあり得ません。

大槻教授が「霊は物理的には絶対に存在しない」とおっしゃっているのは熱力学の第二法則、一般的に「エントロピーの法則」呼ばれるものと霊の存在が矛盾するからという一点です。では本当に矛盾するのでしょうか?  エントロピーの法則とは正しく書けば

孤立系におけるエントロピー平均すると増大の方向に向かう

というものであり一般の皆様には何の事だか良く解らないと思います。この法則を私が赤字と青字で色を変えたのには意味があるのですがその訳は後で述べるとしてまずはこの法則の説明をしたいと思います。

大槻教授はその著書「冝保愛子の謎」の116ページで「おならをした空気は徐々に部屋中に広がっていくが一旦広がったおならがお尻の穴に集まって来ることは絶対に無い、これがエントロピーの法則だ」と述べられています。確かにこれもエントロピーの法則ですがこの例えは極めて下品であり解りにくいものです。一般的にエントロピーの法則は以下のように説明します。

例えば箱の中にサイコロを10個入れてすべてのサイコロの目を1にします。そしてサイコロの入った箱に蓋をしてその箱をふればふる度にサイコロの目は元のすべて1であった状態からバラバラになっていきます。これを物理学では「エントロピーが増大した」と呼びます。

もう一つの例として試験管に冷水を半分入れてその上に熱湯を入れると最初は熱湯と冷水に分かれていたものが時間の経過とともに同じ温度のぬるま湯になっていきます。これもエントロピーが増大した訳です。

私が最初にこの法則を赤字で書いたのはこの赤字の部分を大槻教授が一切説明していないからで私が説明させていただきます。まず外から絶対にエネルギーが加わらない「孤立系」でなければエントロピーの法則は成り立ちません。水を入れた試験管の例でいえば片方をガスバーナーで熱してもう片方を氷を使って冷やせばどうなるでしょうか? 確実にエントロピーは減少の方向に進みます。

もう一つ、「平均すると」エントロピーは増大するという事です。自然にでもエントロピーは減少する可能性もあります。箱に入れたサイコロの目の例を思い出してください。ゆすった箱の中のサイコロの目がすべて1になる可能性がある事が解ると思います。但しその確率は小学校に入学した子供が1日に百回その箱を90歳までふり続けても出来ない可能性のほうが高い訳です。サイコロの1の目が出る確率は6分の1であり10個のサイコロの目がすべて1になる確率は6の10乗分の1で60466176分の1という恐ろしく低い確率になり、まず確認する事は不可能です。大槻教授のおっしゃられた「おなら」の例でもにおいの分子同士が再び集まってお尻の穴の周辺に戻ってくる可能性もゼロではありません。そんな事は100万年に1度も起こらないほど確率が低いだけです。

大槻教授のおっしゃるように物理学の法則は絶対で不変のものですが正しく教えないと法則自体がおかしいものになってしまいます。大槻教授がおっしゃっているのは青字の部分だけで

エントロピーは増大の方向に向かう」

という事だけでありそんな法則自体が物理学上あり得ません。エントロピーの法則とは「確率の低い事は起きにくい」という当たり前の事を法則として定義しているだけのものでありこんな法則だけで心霊現象を否定できるものでは決して無い訳です。幽霊を見たり超常現象を経験している人の多くは霊や神や仏を信じています。そういう人にとってはこの世の出来事は決して「孤立系」ではない訳でこの法則自体が適応出来ません。大槻教授は物理学者であり確実に私よりも物理の知識をお持ちでありエントロピーの法則についても真実は解っていらっしゃる筈です。そういう人がわざわざ物理の法則をしっかりと伝えずに持論を主張する事は大きく日本の物理学の進歩の阻害なる確信犯の犯行です。絶対にやめて頂きたい。

物理学の法則は絶対で不変であり「エントロピーの法則」も確かにあります。しかし「エントロピーの法則」では決して霊の否定も生まれ変わりの否定も説明できません、これが物理学の真実です。

あとがき

大槻教授は確かに日本の物理学の権威の一人ですが日本だけに限っても物理学の一流の学者は何人もいらっしゃいます。まして世界中を見れば物理学者で大槻教授レベルの人はたくさんいらっしゃる訳です。ところが少なくとも私は「物理学で心霊現象を否定できる」と公言しておられる人を大槻教授以外には知りません。これはおかしな話であり、本当にそんな事が出来るのであれば大槻教授以外にも必ずたくさんの学者が出てくるはずだと考えるのは当然です。

とはいえ私は大槻教授が好きであり大変尊敬しています。大槻教授が霊の存在を否定する事も自由です。しかし科学の真実を曲げてまで持論の正当性を証明しようとする事はオカルトブームなどよりはるかに悪質であり物理学の知識の乏しい一般庶民に間違いだらけの物理法則を教えて霊の存在を否定する事はこの世のあらゆる科学の進歩に害しか与えない間違いだと私は思っています。したがって今後もそういう事が行われるのであれば私はいつでも非難させていただきますし、私の書いている事が真実でないと思われるのであればいつでも議論には応じますので宜しくお願い致します。